この連載は,2021年10月17日にアイデミー CTO の清水 (@meso) が,アイデミーの技術戦略を社内にプレゼンしたものの文字起こしです.後編となるこの記事では,前編で説明した技術戦略でアイデミーは何を目指しているのか?何のために技術戦略があるのか?について解説します.
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「技術戦略」は「戦略」という言葉が示す通り,それ自体は目的ではありません.「技術戦略」は手段であり,これを通じて実現したい目的が存在しています.アイデミーは技術のスタートアップとして,技術を駆使したプロダクトを開発し提供しており,技術戦略はその「プロダクト」のために存在しています.
逆に言えば,「技術戦略」と「プロダクト戦略」は密接に関係していて,切り離すことができません.Aidemy 事業の担当者と議論して「こういう形で抽象化してプロダクト戦略の概略を出せるんじゃないか」として作ったのが,これから話すプロダクト戦略の概略で,そして技術戦略によって実現したい目的です.
プロダクト戦略
「Aidemy」という e-ラーニングのプロダクトは,ソフトウェアだけで構成されているわけではありません.コンテンツ (Aidemy が提供する教材) や CS (Customer Success) もAidemy というプロダクトの重要な一部です.ただし今回はプロダクト戦略のうち「技術戦略」と関連した部分にのみ言及します.スライドに「Aidemy (Alms)」と書いているのは「Aidemy のバックエンドを支えるソフトウェア Alms の戦略です」という意味です.
国際化対応
まずAlmsのプロダクト戦略の1つ目は国際化対応.多言語対応だったりとか,もしくは海外からスムーズに使っていただけるようにしていきます.
人材抜擢ツールとしての利用可能性の追及
2つ目は人材抜擢ツールとしての利用可能性の追及です.Aidemy を使って「実はこの人結構リーダーシップあるんじゃないか?」とか「この人,会社から言われた以外の色んな技術を,どんどん積極的に学んでいってくれてるよね」とか,今まで目に見えていなかった人材をピックアップできたという事例が確認できています.
これまでもこういった人材抜擢ツールとしての側面はありましたが,その側面をもっと強調するような新機能を実装していこうと考えています.教育に止まらない付加価値を提供することが,他社との差別化にもつながっていくんじゃないかな思います.
UX 改善
これは当たり前の話ではありますが,3つ目は UX の改善ですね.管理者向けの機能も受講者向けの機能も,もっと使っていただけるように使いやすくする UX の改善をやっていきたい.管理者向けでいうと上で触れた人材抜擢のための見える化もそうですし,受講者にとっても学習のモチベーションがアップするような工夫を加えたりして,どんどん積極的に使っていただけるソフトウェアにしていく.
運用効率の改善
4つ目としては,運用効率の改善をやっていく必要があると思っております.例えばより低コストでより高可用性を持ったシステムにしていくとか.他にも,今はお問い合わせ対応でも人力で多くのリソースを割いているかなと思いますので,そういったところにAIを活用するとか,定型業務の自動化なども射程に入ると思います.
コンテンツに関しても,新規コンテンツを「簡単」かつ「安全」に公開できるようにしていきます.今はやや難しいツールを使ってコンテンツを公開しなきゃいけないところを,もっとGUI的にボタンポチポチで安全にできるようにしていく.そういった社内UXの向上も,Aidemy が提供する価値を最大化する戦略の1つかなと思っています.
ちなみに,アイデミーのプロダクトには Aidemy と Modeloy がありますが,今回は Aidemy について言及しました.
事業戦略
技術戦略を通じて実現したい「プロダクト戦略」を話しましたが,「プロダクト戦略」も別の視点から見れば「目的」ではなく「手段」です.アイデミーは優れた製品を開発することを通じて,より広範に価値を届けたいと考えています.「プロダクト戦略」は更に上位の目的を実現するための手段であり,その目的とは「事業戦略」です.
そこで「事業戦略」をおさらいしましょう.アイデミーは事業戦略として,次の3つを掲げています.
LTV 向上のための川下への拡大
「川下」とは,Aidmey サービスによる教育研修が終わった後の部分です.例えば Alms の「人材抜擢ツールとしての利用可能性の追及」がこれに該当します.そこを拡大していきます.
中堅企業へターゲットの拡大
します.
東南アジアへ展開地域の拡大
アイデミーのサービスの提供エリアは,今まで国内がほぼほぼ全てでした.これを東南アジアへも拡大していきます.プロダクト戦略の1つとして「国際化対応」を挙げましたが,当然それはこの事業戦略から導き出されたものです.
全ては自らの「ミッション」を実現するため
では「事業戦略」は何のためにあるのでしょう?「事業戦略」の目的は何でしょうか?突き詰めて考えれば「事業戦略」も,それ自体は目的ではありません.「事業戦略」の目的は,アイデミーが掲げるミッション「先端技術を経済実装する」であり,これを実現するための手段として「事業戦略」が存在します.
前編で紹介した「技術戦略」は実は,アイデミーの「ミッション」を実現するために存在しており,「技術戦略」は,遡って突き詰めれば「ミッション」と直結しているのです.具体的な「技術戦略」と抽象的な「ミッション」を,正確に関連付けて理解するのは難しいかもしれません.これらの繋がりを理解するために,「ミッション」と「技術戦略」の位置づけを整理しましょう.
- アイデミーには「先端技術と経済実装する」という「ミッション」があり,
- 「ミッション」を実現するために全社の「事業戦略」があります.
- 全社の「事業戦略」を実現するために個々の「プロダクト」があり,
- それら「プロダクト」の戦略を実現するために「技術戦略」が存在する.
技術戦略はそれ単体で存在しているのではなく,アイデミーの「ミッション」の実現のために存在していることが理解できたでしょう.アイデミーのエンジニアの日々の仕事は,「先端技術を経済実装する」というミッションと,このように密接に関連しているのです.